The HIRO Says

If you smell what The HIRO is cooking!!!

時間がないと不平を言うよりも

ゆとりの法則 誰も書かなかったプロジェクト管理の誤解 [ トム・デマルコ ]
進んで時間を作りましょう。


アジャイルに限らず、新しいことをやり始めようとすると、

忙しくてそんな余裕なんてありません

と、にべもなく断られることって多いですよね。


私は現在、色々な人・チームからアジャイル導入の相談を受ける立場にあります。そして皆さんの予想通り、マネージャーやチームメンバーから反対を受けて導入がうまく行かないという相談が多いです。そして、導入を反対される理由として良く耳にするのが、この「忙しくて〜」というものです。

アジャイルを導入したい人にとって、このような理由は、「現場の改善意欲の欠如」や「マネージャーの無能の証」のように見えるものです。(かくいう私も昔はそうでした。)しかし今では、そのような反応には注意してあたらなければならないなと思っています。というのは、そのような反応には、

  1. 時間が足りないという事実を無視している恐れ
  2. 反対者を「彼ら」と切って「敵対者」と見なしてしまう恐れ


が潜んでいると思うためです。
私は、このような反応に対しては、次の3つに分けて順番に考えた方が良いのではと思っています。

  1. 時間がないことを理由にするな!と怒ることをまず辞めよう
  2. 時間がないということが事実であれば受け容れよう
  3. 時間がないのであれば、時間を作ろう


以下、私自身の例をもとに、このように考える理由を説明しようと思います。


1.課題

私の所属するチームは、新人教育や社内研修を担当しています。このチームでは、研修の種類毎に作業が属人化していて、他の人で代替することができない状況にありました。また、各人が多忙な状況にあり、他の人に作業内容を教える余裕がない状況でした。
一方で、新人や研修は「オペレーション」です。決まった日時に絶対にやらなければなりません。システムのリリースのように「都合が悪いので延期する」といったことができません。
このような状況と仕事内容なので、もし研修当日に担当者が電車遅延などのトラブルに巻き込まれようものなら大混乱です。私も入社早々、この手のトラブルに随分と巻き込まれ手を焼きました。
この状況を解決することは、私自身がトラブルに振り回されずに安定して仕事を出来るようになるためには必須のことでした。


2.解決方針

まず私は、チームメンバーが忙しくて手が回らないという事実を直視して受け容れました。その上で、次のことを行うことにしました。

  1. トラブルに巻き込まれた際に行った作業を全て記録して、作業手順書として整理する。
  2. メンバーの仕事を手伝い、
    1. 私自身が仕事を覚える。
    2. メンバーの負担を減らす。
    3. 作業手順書の誤りや漏れを追記・修正する。
  3. 手順書が整理できたら、チームメンバーに展開して指摘をもらう。
    1. 仕事を手伝うことでメンバーに余裕が出来るため、指摘を受けやすくなります。
    2. メンバーの仕事のプラスにもなるため、繰り返すと指摘が上がりやすくなります。
  4. 作業を行ったら、必ず振り返りを行い、KPT を整理し、次回に活かす。


言い換えると、属人化している作業をはぎ取って、手順として整理して、チームメンバー全員で共有できるようにしました。


3.成果

上記の対策の成果として、次のことを実現できつつあります。

  1. 他メンバーでも(上手かはともかくとして)作業ができるようになった
  2. 当日トラブル発生時の混乱を減らせた(ゼロには出来ないけれども、減らすことはできた)
  3. チームに時間的余裕ができてきた


最後の「チームに時間的余裕ができた」ですが、実はメンバーがめいめいに「忙しくて考える余裕のなかった」改善事項を持っていて、余裕が出来たことで「やります」と少しずつ自発的に言うようになってきました。例えば以下のようなことです。

  1. 今まで直す余裕の無かった資料を修正・統廃合する
  2. 資料の配布を、印刷ベースからオンラインベース(Confluence)に変更する
  3. それまで公開できなかった研修資料を公開して、他チームからも意見を募るようにする

4.振り返り

メンバーが「忙しくて〜」と言い訳することを責めても、問題は解決しません。またそのように言うメンバーを「彼らが悪い」と言ったところで、何の改善にもなりません。
結局、仕事が多くて忙しいということが事実なのであれば、仕事を減らすことが必要なんです。実際に「忙しい」という事実を少しずつ解決することで、私のチームでは、新たな改善提案がチームから上がるようになってきました。

実は、「忙しいと言い訳している奴らが気に入らない」とか言ってしまう時点で思考停止なんです。

アジャイルは、思考停止との時間無制限の勝負です。思考停止してしまった時点で押し切られます。


5.補足

今回私が実施した方法は、あくまで一例です。他にももっと良い方法は、考えればいくらでもあるのでしょう。
ただ私が実施したこの方法は、他のメンバーの仕事を手伝う分、また手順をまとめる分、最初に大きな負荷がきます。この負荷を受け容れられるか、その上でその負荷に見合うだけの成果を出せるか、そこが選択のポイントだと思います。


6.参考資料

(1)原始時代に飛ばされた状態から携帯電話が作れるか

なるほど、こういう原始時代では毎日食うことにていっぱいで
新しい技術が発達する余地なんてなかったんだお

やったことが似ているぞ。

(2)『Slack』(ゆとりの法則の原著)の Kindle

http://www.amazon.com/dp/B004SOVC2Y/
上記改善をやっている際に、@kawaguti さん@yattom さんから薦められた書籍です。自分と同じことを考えた先人はやはりいたか。

(3)私のメンターのログ