Agile Conference への登壇方法
先日登壇してきた Agile2014。
実際に登壇するまでには、本当に多くの様々なプロセスや学習すべきこと、そしてハプニングがありました。
今後、Agile Conference などの海外カンファレンスへの登壇を目指す方も増えてくると思いますので、そうした方向けに、Agile Conference での具体的な登壇までのプロセスと、私自身がハマった点などについてまとめてみようと思います。
1.登壇までの基本的な流れ
2)募集要項に従い、必要な資料を投稿し、レビューを受けます。
- 締め切りは2月初旬。Agile2014 の場合は、アメリカ東部時間の2月7日(金)23時59分が締め切りでした。
- 日本人にとっては、時差があることを考慮する必要があります。
- 締め切りまでの間、レビュアーの方が様々な指摘を下さるので、それらに回答しながら資料を修正していきます。
3)3月下旬に、合否が発表されます。
- Agile2014 の場合は、3月24日(月)でした。
- 締め切りから合否の発表までかなり時間が空くため、注意が必要です。
4)トラックにより、投稿した資料の追加更新を求められるので、これに対応していきます。
- 後述しますが、私の場合はこれが3ヶ月間に及び、若干ノイローゼ気味になりましたw
5)6月末〜7月末頃に、当日のプレゼン資料を投稿します。
6)カンファレンスに参加し、晴れて登壇です。
最初の公募開始から実際に登壇するまで、8ヶ月近い長丁場になります。
そのため、それ相応の気力と体力、そして周りの理解を得ることが重要になってきます。
2.登壇までの道のり詳細
以下では、上記で簡単に説明した流れを、もう少し詳しく説明していきます。
1)テーマおよびトラックの選び方
公式サイトで募集要項が公開されたら、まず自分のテーマにあったトラックを選択します。
- 参考:Agile2014 での募集トラック一覧
- 各トラック毎に以下の情報がまとめられているので、まずはこれらをチェックしましょう。
- どういうテーマで話すことが求められているか?
- 応募に際して、何を投稿すれば良いのか?
- 「Experience Report」トラックの場合は、6ー8ページの論文を書いて投稿して下さいというものでした。
- 「DevOps」トラックの場合は、自分のプレゼン動画を youtube にアップして、その URL を渡して下さいというものでした。
- 他のトラックは、自分のプレゼン資料ないしその概要を投稿して下さいというものが多かったです。
- 誰が資料をレビューしてくれるか?
ちなみに私の場合、テーマ的に最初は「DevOps」を考えたのですが、自身の英語のプレゼン動画など撮影したことがなかったので断念。「Experience Report」が、自身のアジャイルコーチとしての経験を通じて蓄積してきた知見を発表するという意味でちょうどフィットすると思い、コチラを選択しました。
2)応募方法
- まず最初に、Agile Conference の「Submission System」に、アカウントを作成することが必要です。
- 応募は、この「Submission System」上で行うことになります。
- 「Submission System」では、他の応募者の投稿も閲覧できるので、積極的に情報を収集しましょう。
- 応募に際して、以下の情報をまとめます。
項目 | 記入内容 | 記入例 |
---|---|---|
Title | 発表タイトル | Technology-Driven Development |
Track | 応募したいトラック | Experience Reports |
Co-Presenter | 一緒にプレゼンする人がいれば | - |
Session Type | Talk や Workshop などを選択 | Talk |
Audience Level | 聴講者に期待するレベル | Practicing |
Room setup | 部屋の設定で特に必要なことがあれば | No Preference |
Duration | 発表時間 | 30 minutes |
Keyword | 発表に関するキーワード群 | Continuous Integration,... |
Abstract | 発表の概要 | ※省略 |
Learning Outcomes | 聴講者がこの発表から得られる成果 | ※省略 |
Prerequisite Knowledge | 聴講者に事前に期待する知識 | ※省略 |
Information for Review Team | レビュアーにお願いしたいこと | ※省略 |
Presentation History | 過去の自身の発表履歴 | ※省略 |
-
- 具体例な記入例は、コチラをご覧下さい。
- 締め切りまでは、何度でも更新が可能です。
- 上記情報をまとめたら、そのトラックで求められる資料を投稿します。
- こちらも、締め切りまでは、何度でも更新が可能です。
3)レビューとその対応方法
- 「Submission System」に応募をして数日すると、レビュアーや他の投稿者からコメントが届くので、それらに対応しながら修正を重ねます。
- 基本、コメントが届いたら、1日以内に返答をすることがポイントです。
- このやり取りの態度・ペースも、合否に際しての評価対象となります。
- ちなみに、私宛に届いたレビュー指摘例です。
- "Good Ideas" by Joseph Yoder
Hi Hiro: I very much like the ideas. I agree that technology in the title had me thinking something else so the subtitles you are working with and suggested can help a lot. Looks like it can be a good experience report.
ちょっと勇気でた。
4)投稿した資料の追加更新&当日のプレゼン資料の投稿
- これらの作業は、基本「Submission System」上で実施します。
- 私の場合、「Experience Report」で論文でしたが、後日「Submission System」経由で Agile Alliance 公式サイトに論文が公開されました。
※プレゼン資料は、Slideshare にも公開しました。
3.Challenges
上記の流れでも十分ハードコアなのですが、今回私は色々とトラブル・苦労を重ねました。
将来の登壇者の皆さんには、是非私の屍を乗り越えていってもらいたいですw
1)軽い気持ちで英語論文を書くと、年末年始が潰れる。
私の調査不足もあったのですが、応募に必要な論文を「公募を通すための、情報処理試験などの小論文的な位置付けのもの」と勝手に理解して安請け合いしてしまいました。
実質人生初の論文を英語で。これがエラい時間かかりました。年末年始の休みをほぼ潰すことに。
でも面白かったですよ。
2)論文が見つからないよ事件
何とか論文を書き終え、「Submission System」に必要事項を記入して、1月12日に応募しました。
で、最初にいただいたレビューコメントが、Linda Rising さんからの「Paper is required」というものでした(´・ω・)
…「Submission System」の記入例を見ていただければ分かるかと思うのですが、背景色が水色なんですね。で、ファイルのリンクは大概青。せっかく添付した論文のリンクが見えなかったようでした。
これ UI の欠陥じゃね?
結局、メールで論文を Linda さんに直接お渡しして、見ていただくことでこの問題を乗り越えました。
3)IEEE って何ですか?事件
3月24日(月)に公募が通ったとの連絡があり、ホッと一息ついたのも束の間、「Shepherd をつけるから同論文を6月1日まで直せ」という連絡が届きました。
えーっと…何で修正するんですか???
その疑問には答えていただけないまま、Scrum Regional Gathering Tokyo 2014 でも来日・講演された Jutta Eckstein さんが私の Shepherd について下さり、ハードな修正を繰り返しました。
GW で九州旅行に行ったのですが、その際もずっと論文ばかり書いていました。
後日同僚に教えてもらって分かったのですが、Agile Conference の Experience Report トラックに投稿した論文って、IEEE にも掲載されるらしいですね。
だったら最初から教えてくれよ〜!
ちなみに、実質人生初論文を書くにあたっては、下記書籍に非常にお世話になりました。これらを読み返すと、初夏の九州を思い出します。
4)追い込みの6月
Jutta さんの指導のもと、論文に基本的に OK をいただいた後、Experience Report トラックのトラックチェアの Rebecca Wirfs-Brock さんから、
「最後の仕上げを7月1日まで行いましょう」という連絡が届きました。
分かりました、今年のワールドカップはあきらめます。
私はさほど苦労しないで済みましたが、人によっては苦労するかも?な情報を。
- 最終論文は、Word での提出を求められます。
- IEEE の ACM テンプレートというものがあるので、こちらを使うことになります。
- http://robotics.stanford.edu/~suresh/theory/acmstyle.html
- フォントは「NewCenturySchlbk-Roman」。マシンによっては入っていないフォントなので注意。
5)名誉の負傷
- 1月
- 鼻と口から毎日出血。
- 血尿も出る。
- 精密検査の結果、過度の過労と診断。
- 4月
- 右足肉離れで全治3週間。
- リアルに手が痺れて動かなくなる。(過度のストレス)
- 6月
- 下腹部に激痛が走り、尿管結石と診断。
- 両肘の骨が曲がっていて、指が動かなくなる症状が出ていることが発覚。
- 7月
- 過度の過労と診断。(2度目)
- 首の骨にヒビが入っている疑惑。
ちなみに、一日中座って過ごすと危険らしいです。
http://www.lifehacker.jp/2013/04/130424how_sitting_all_day.html
文字通り命を削る作業なので、周囲の理解・サポートと十分な体力を得る必要があります。
結論
- 業務と私生活が確実に犠牲になりますので、その覚悟と体力、そして周囲の理解・サポートを得ましょう。
- 論文は、自身のアイデアを、客観的に評価・判断してもらいやすい形式に整理・発信できるものなので、自身の知見整理・成長に有益。
- 特に英語の論文は、海外でのプレゼンスが確実に向上する。
- 特に弊社の場合は、外国人の上司・同僚にアピールしやすくなる。
正直ハードです。でも、それに見合うだけの成長が得られます。日本国内で刺激が足りないと感じている方は、是非このヒリヒリするような刺激を味わってもらいたいなと思います。