The HIRO Says

If you smell what The HIRO is cooking!!!

そろそろ、人の定着と引継について本気で取り組むべき時では?

今日、とあるビルに用事があって出掛けた。
そのビルは、これまで何度も行ったことがある。だから入館手続きもバッチリだ。必ずそのビルの社員さんの付き添いがないと入館できないことも知っている。
しかし今回は、「用事があって付き添えないから、その旨を入り口の守衛さんに説明して入館して下さい」という主旨のメールを、前日夜にビルの社員さんからいただいていた。


さて、念のため15分前にビルに到着して、前日のメールの指示通りに守衛さんに事の次第を説明してみた。
するとどうだろう。「そんな話は初耳だ」・「初めてのケースなので、どうしたら良いのか分からない」と言われてしまった。
話が進まないのが私の目にも明らかだったので、もう一人の、若干年配の守衛さんの助力をあおいだところ、結論としては付き添い無しでの入館は認められないとのこと。


更に他の守衛さんも捕まえて確認したところ、「特別な入館方法があるので、この書類を記入して下さい」と。しかし、その書類を記入して待つこと10分。担当部署に連絡が一切取れないらしく、手続きが出来ないという守衛の説明を聞いて天を仰ぐ。


さすがにらちがあかないので、「用事があるので付き添えない」というビルの社員さんに急ぎメールを入れたところ、その社員さんが急いで駆けつけてくれて、何とか入館することができた。しかし、結局打合せには15分以上遅刻する羽目になった。

人の入れ替えの激しすぎる職場

守衛さんとやり取りをしていて、いくつか気になるフレーズがあった。

  • こんな作業はやったことがない/初めてだ
  • この作業の手順は聞かされていない
  • (説明通りにやったが)全然できない


明らかに、その守衛さんたちは着任して間もなく、しかも必要な業務についての説明を十分に受けていないことが私にも分かった。
私は自然と守衛という職務にプロフェッショナリズム幻想を持っていたので、この事実はなかなかにショッキングだった。しかし一方でこの事実は、デジャブを感じるものでもあった。

ソフトウェア開発の現場

そう、最近の我々ソフトウェア開発の現場でも、同様のやり取りが見られるではないか?

  • この機能は前任者だけがやっていて、どうやって修正すれば良いのか分からない
  • この機能のテスト方法が、どこにも記録として残されていない
  • 今チームに残っている人の誰も、これらの疑問に回答することができない


とくに最近、「エンジニア・リソース」という言葉が周りで流行りだして、エンジニアリングできる人材を消耗品のように扱い、知識と技術の蓄積が軽視される傾向とその弊害が顕著になってきたように思う。アジャイルの文脈で言うならば、「技術的負債」がギリシャ国債並みになってきた、と言ったところか。

例えば、私が先日担当した機能。プログラム的な修正は1時間程度のものだったが、いくら仕様通りのデータを用意しても動作しない。過去の資料を片端から漁り、知りうる限りの人に質問してみたが、誰もテスト方法を知らないと。ログの追加・解析などを行い、そもそも仕様に誤りがあることが判明したのは、その機能の修正を始めてから1ヶ月以上経った後だった。これが「技術的負債」の現実かと慄然としたのを、今でも覚えている。

優秀な人を雇えば万事解決か?

優秀な人材だからと、すぐに活躍できることを期待するのは、おそらく誤りだろう。例えば、AWSに詳しいエンジニアを雇っても、その会社の22番ポートが空いていなければ、その人の能力はおそらくすぐには活かせない。そうしたことを理解して「優秀な人材」を登用している会社は、果たしてどれほどあるのだろうか?

結論

特に昨今、ソフトウェア開発業界の流動性は格段に高くなった。有名なエンジニアがいつのまにかxx社に移籍していた、同僚がまた退職する、なんていうことは日常茶飯事だ。
しかし一方で、我々の仕事はやりやすくなっただろうか?正直な話、技術的選択肢は増えてきたが、既存システムが分かりづらいと思うことは増えつつあるように思う。


そろそろ、人の定着と引継について本気で取り組むべき時ではないだろうか?