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アジャイルコーチの実践スキル 1000 本ノックをクリアしました

前回の記事に引き続き、Scrum Alliance が先日公開した、アジャイルコーチの実践スキルを学ぶことができる Microcredential *1Agile Coaching Skillsの受講を終えました。

このコース、一見すると目次が前回のコースとほぼ同じで、受講開始前に若干不安を覚えました。しかし実際に受講してみたところ、前回のコースで学んだものに補足を加えつつ、何度も反復練習を課されるような内容でした。例えて言うならば、野球の 1000 本ノックでゴロの捌き方を徹底的に体に染み込ませるような感じでした。

そこでこのエントリーでは、この有益な体験を他の方にも共有したいと思い、アジャイルコーチになりたい人、およびアジャイルコーチとしての実践的スキルを高めたい人向けに、このコースの概要、学べること、および受講した所感をお伝えします。

目次


1. このコースの概要

  • Scrum Alliance が日本時間 2025 年 1 月 30 日に提供を開始した、アジャイルコーチの以下の 6 つの実践的スキルについて学ぶことができる、オンライン&オンデマンドのコース(== e ラーニング)です。
    • Facilitating
    • Teaching
    • Mentoring
    • Advising
    • Leading
    • Coaching
  • 費用は、本稿執筆時点(2025 年 3 月 15 日)で、Scrum Alliance メンバーは 84.99 ドル、非 Scrum Alliance メンバーは 99.99 ドルです。*2
  • このコースを受講すると、4 SEU を取得できます。*3


2. このコースで学べること

ネタバレ防止の観点から、ポイントを絞って簡潔に説明します。

  • アジャイルコーチとしての上述の 6 つのスキルを、コーチング・リトリート」*4に参加している体で学ぶことができます。
  • 既にアジャイルコーチとして活動している人、およびこれからアジャイルコーチになろうとしている人それぞれの視点で、上述の 6 つのスキルそれぞれについて各種疑問を解決していくストーリー仕立てとなっています。
    • 両者の視点で学べることがポイントです。
  • 知識の紹介に加えて、アジャイルコーチの遭遇する課題、それらへの具体的なアプローチ、クライアントへの実践的な質問例などが大量に紹介されています。
    • 具体例
      • クライアントのメンバー・チーム・組織との対立・衝突は、避けなければならないことではなく、当然起こることとして紹介されています。
      • 上記の前提で、これはコーチだけで解決するものではなくクライアントに解決してもらうものであること、そのためにクライアントにどのように解決のきっかけを提供すれば良いかについても説明されています。
      • 一方で、上記に遭遇した際のコーチの心身の回復(resilience)にも目を向けた説明がされています。


3. 受講してみた所感

  • 前回のコースは理論編、今回のコースは実践編で、相互に補強し合う内容だなと感じました。
    • 例えば Mentoring については、ベースの説明はどちらも同じである一方、Coaching と Advising の使い所、および Mentee のニーズ把握の具体的な方法の説明がありました。
    • 加えて、上記のような具体的な方法がケースごとに複数明記されており、より実践を意識させられる印象でした。
  • アジャイルコーチング以外にも応用できる内容だなと思いました。
    • 例えば Teaching で言及されている内容は、以下にも活かせる内容だと感じました。
      • カンファレンスなどへのプロポーザルの提出
      • プレゼン資料の作成
      • プレゼンの実施
      • プレゼン実施後のフォローアップ
  • コーチとしての心身の回復(resilience)に、かなり重きが置かれている印象でした。
    • 例えば、心身のバランスを取るためのクライアントとのネゴのポイントや、精神的に辛い状況に陥った際のケースとその対応方法が明記されています。
  • 医療系の例が多い印象でした。
    • アジャイルスクラムはもはや IT ビジネスのものだけではない」という、Scrum Alliance の強いメッセージ性を感じました。
  • 公式サイトには想定所要時間 4 時間と記載されていますが、私の場合は 12 時間ほどかかりました。
    • 前回のコースと比較して、実践例の記載が多かったことから、その分若干受講時間が伸びた印象です。


4. 一連のコースに関する FAQ

アジャイルコーチの一連のコース(Microcredential)に興味をお持ちの方から質問をいただきましたので、ここで回答させていただきます。


質問 1: トレーニングとして価値があるか?

Scrum Alliance の「認定スクラムマスター研修」(CSM)に価値があると認識されている方・会社であれば、十分価値があるのではと個人的には考えています。

  • 内容的には、認定スクラムマスター研修で、ワークなどでは体感できるものの明確な説明のない Teaching/Facilitating/Advising/Mentoring/Leading/Coaching について、明確かつ具体的な定義・練習方法・実務での活用方法が説明されています。これらを明確に意識して練習・活用できるようになる点が、大きな価値かと思います。
  • 価格は、1 つのコースで 12,000 - 15,000 円です。認定スクラムマスター研修が 20 - 30 万円なので、この価格差を「ROI が高い」と考えるかどうかかなと思います。


質問 2: 言語の難易度はどの程度か?

かなり平易かつ丁寧な内容で、理解に詰まることは少ないと感じました。

  • 書籍『チームトポロジー』か、それよりも優しいレベルです。
  • 『スクラムガイド』のような、抽象度が高くて解釈の余地があるような難易度ではなかったです。


質問 3: 翻訳機能はあるか?

レーニングコンテンツが全て Web なので、ブラウザの翻訳機能を利用できます。

  • (参考)Chrome の翻訳機能で、日本語でコンテンツを見られることを確認できています。
  • レーニングコンテンツ内に一部動画がありますが、いずれの動画にも「transcript(動画の内容を文字起こししたもの)」がついているため、上記の翻訳機能を利用できます。


5. 今後の野望

本コース内で、アジャイルコーチングの練習方法として「Triad」というものが紹介されていました。

これは、3 人組を作って、各人が (1) コーチ役、(2) クライアント、(3) 観察者になり、傾聴・強力な質問・フィードバックなどの練習をローテーションを組んで行うものです。

2011 - 12 年頃に日本全国で開催されていた「アジャイルサムライ道場」のように、こうした練習の機会をコミュニティライクに提供できると、アジャイルコーチングを学びたい方にも自分にとっても嬉しいかもと考えています。

「--待て、しかして希望せよ」

*1:高等教育における単位的なものです。(参考)https://ecampus.oregonstate.edu/news/what-is-a-microcredential/

*2:私が受講を開始した 2025 年 2 月 2 日時点では、Scrum Alliance メンバーは 127.50 ドル、非 Scrum Alliance メンバーは 150 ドルでしたので、若干お安くなっているようです。

*3:費用・取得可能な SEU ともに、前回紹介した「Introduction to Agile Coaching」および「Becoming an Agile Coach」と同じです。

*4:日本では、アトラクタ社が開催している「アジャイルコーチとスクラムマスターの集い」が該当します。