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Agile2016の参加レポートを公開しました


今年(2016年)7月末に、オリンピックや CNN で有名なアメリカのアトランタで開催された Agile2016 に参加してきました。その社内向けレポートを公開しても良いことになりましたので、共有させていただきます。

お伝えしたいことは極力このスライドに詰め込みましたが、スライドだけでは説明足らずの箇所も多々あるかと思いますので、可能な範囲で追加説明をしてみようと思います。


1. カンファレンスのここ数年の変化


キーノートスピーカーの Jurgen Appelo さんとともに。
ちなみに私は、Agile2014 以来の参加だったのですが、その間でも多くの変化を見て取ることができました。

(1) 参加者数の増加

今回は、42か国から2,500名以上の参加者がアトランタに集結しました。
Agile2014・Agile2015 ともに2,000名程度だったので、着実に増加傾向にあると言えます。

(2) 登壇者の変化

これまでは、有名な書籍の著者やレジェンドが大量に集結していたのですが、今年は例年以上にレジェンドクラスの登壇が減っていました。
一方で、これまでボランティアや一般参加者として参加し続けていた人たちが、一念発起してサブミッションを通して登壇するという例が非常に増えていました。
例えば、Agile2013で知り合ったカリフォルニアの友人がコーチングのワークショップを開催していたり、ずっとボランティアをしていた日本人が論文を2本投稿してどちらも採用されたり。一方で、一人で3本も論文を投稿してダメだったという人もいたりなど。
これまでの「有名な人のお話を伺いに行って友達になる」カンファレンスから、「参加者みんなで意見をぶつけ合ってお互いを高め合っていく」カンファレンスへ変わってきたな、という印象です。

(3) 日本からの参加者数の減少

今年は、日本からの参加者が私を含めて6名でした。
Agile2012で30名程度、Agile2014で20名強だったので、急激に減少してきていますね。
アジャイルへの興味が失われつつあるのか、それとも自力でできるからもう十分になったのか?ちょっと原因を知りたいですね。


2. 議論の傾向

以前ご紹介した Agile2014の参加レポートでは、メトリクスに関する議論が出始めていると説明させていただきました。
それでは、Agile2016 ではどのような議論の傾向があったのか?その辺りをまとめてみます。

(1) メトリクス

今回の Agile2016 では、メトリクスを題材にしたセッションが5つもあるなど、もはやメトリクスは当たり前のものとして説明されていました。

また、どのようにメトリクスを扱うべきかについても、下記のようにある程度共通認識が生まれつつありました。

一方で上記の最後にある、「チーム・プロダクトの成長を促すためのもの」としての視点は、ほとんどの人が持っていませんでした。この点については、私がその重要性を多くの人に説明して回っていました。それがアジャイルカンファレンス。

(2) DevOpsとメトリクス

DevOps については、次のような議論の傾向がありました。

  • DevOps の技術面は、既に前提条件として扱われている。
  • DevOps にメトリクスを組み合わせて、DevOps のプロセス面を改善しようという議論が活発になりつつある。
    • 実際、そういう内容のセッションが2つありました。


DevOps に関するメトリクスについては、ある程度共通化が図られ始めています。従いまして、新たにメトリクスを考案しなくても、ある程度このリストを再利用することができます。



それらに対する改善策も、ある程度分かってきています。というよりも、DevOps の各プラクティスを実施すれば、各メトリクスが改善して結果 DevOps が成功する、という流れになっています。

(3) 戦略的にコードを消せ!


『レガシーコード改善ガイド』の著者の Michael Feathers さんによるセッションが、なかなか興味深かったです。その名も、『戦略的コード削除術』!
プロダクトが成長するとどうしてもプログラム(プロダクション・テスト双方含む)が「汚れて」くるので、戦略的に不要・不必要なコードを「削除」して、テストし易いプロダクトに保つべし!というものでした。

(4) 大規模スクラムスクラムのスケール

アメリカでの影響力の大きさか、SAFe(Scaled Agile Framework) の一人勝ちのような情勢でした。(SAFe だけで3セッションありました。)
一方で、LeSS(Large Scale Scrum)Nexus Framework についても、着実に言及はされていました。これらについて知見をお持ちの方は、来年の Agile2017 へ登壇するチャンスなのではないかと思います。


3. モダン・アジャイル

3日目のキーノートスピーカーの Joshua Keriefsky さん『モダン・アジャイルが、今回のカンファレンスで一番インパクトがあったと思います。

セッションの概要は InfoQ にも翻訳されていますが、要は今の時代に即したアジャイルを「再定義」して、より良いソフトウェア開発を実現すべきではないか?ということです。


そこでポイントになるのが、この4つの要素。

このロゴの日本語版を、角征典さんが作成してくださっています。下記サイトからダウンロード可能です。
http://modernagile.org/


この「モダンアジャイル」によって実現すべき未来。このアイデアに正直滾りました。詳しいことはレポートに詰め込みましたので、ぜひ見ていただきたいです!


4. 私の Next Action


海外カンファレンスに出たら、それをできるだけ多くの人にフィードバックするのが参加者の務め!

というわけで今年は、こんな活動を実施しています/実施予定です。

  1. 同レポートにもとづく報告会を、2016/09/01(木)に自社内で実施しました。
  2. 「Pin the Tail」という、カンファレンスで実施されていたメトリクスのワークショップを、自社内で実施しました。
  3. 2016/09/24(土)の XP祭り2016 で、Agile2016 参加者同士のパネルディスカッションを実施予定です。


また、ご希望があれば、同レポートをベースに社外報告会を開催しようとも考えています。ご希望の方は、それとなく私に教えてください〜
未来の日本/世界のアジャイルについて、お互いに語り合えれば。


参考資料

レガシーコード改善ガイド (Object Oriented SELECTION)

レガシーコード改善ガイド (Object Oriented SELECTION)

Large-Scale Scrum: More with LeSS (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))

Large-Scale Scrum: More with LeSS (Addison-Wesley Signature Series (Cohn))