昔自分に嫌がらせをしてきた人と話し方が似ている。以前このエラーに遭遇した時、上司に頭ごなしに怒られたことがある。RDBのIndex、そういえば昔のプロジェクトマネージャーが「自分はそんなものを聞いたことがない」「気持ち悪い」と言い出して、5時間説得しても納得してもらえなかったっけ…
上記のようななんでもない日常の出来事で、急に怒りが込み上げてきて、自分の感情が制御しづらくなったことはありませんか?
「アンガーマネジメント」では、過去の失敗やトラウマを想起させる事象に遭遇して怒りが引き起こされることを「トリガー思考」と呼称します。またCo-Active Coachingでは、同様の事象に遭遇してクライアントから心が離れ集中できなくなった状態を「ひっかかる」と表現します。
私は最近、このトリガーを引き苦しむことが増えつつあります。この状況を少しでも改善する観点から、対処方法を備忘録として残します。
「トリガー」に対処する4つのステップ
1. トリガーの存在に気付く
まず自分にトリガーがあり、今回それを引いてしまったことに気付くことで、一歩立ち止まることができ、思考が不快感に押し流される状態から脱することができます。
ちなみにマインドフルネス瞑想に習熟していると、トリガーと怒りとの間に一呼吸起きやすくなるため、このステップを実践しやすくなります。
2. トリガーに裏付けがあるか否かを識別する
次に、引いたトリガーを確認し、それに裏付けがあるか否かを識別すると良いです。
(例)昔、具体的な基準を明確に提示されずに何年も昇進を見送られたことがあったが、今回も基準は明確に提示されていないか?
ここでのポイントは、(1) 想像や妄想がトリガーになることが思いの外多いことと、(2) 明確な裏付けと想像・妄想とを区分けすることでアクションを取りやすくなることです。
3. (可能であれば)トリガーを解決する
このステップは、可能であればトリガーを根本解決するというものですが、必須のステップではありません。
想像・妄想に原因がある場合は、信頼できる友人や同僚に相談したり、カウンセラーの力を借りたりして、自分の心と向き合うことが根本解決につながることがあります。
一方で明確な裏付けがある場合は、声をあげてしかるべき人・組織に働きかけることで、根本解決につながることがあります。
4. トリガーを「やり過ごせる」仕組みを作る
トリガーを根本的に解決しなくても、無視できる状態にできれば、トリガーを引かずに済みます。
例えば、自分にトリガーが存在していることを事前に把握しておいて、マインドフルネス瞑想を習慣化しておくことで、トリガーに遭遇しても踏まずにやり過ごすことができるようになります。
また、トリガーが自己の過小評価のような妄想に基づくものであれば、自身の過去の業績など、トリガーそのものを否定する事実をすぐに目に入るところに置いておくといった工夫もできます。
(例)私の場合
上記ステップの具体例として、私の例を挙げます。
私の場合は、「他者からの評価が低い」という思いと、「自己を評価できない」という傾向の2つの問題があり、いくつかのトリガーで強く傷ついていました。
1. トリガーの存在に気付く
マインドフルネス瞑想を続けていること、またアンガーマネジメントやCo-Active Coachingを学んでいることで、トリガーにはスムーズに気付くことができました。
2. トリガーに裏付けがあるか否かを識別する
一方でトリガーの裏付けを確認していくと、以下のことが分かりました。
- 上司が私に対して、ネガティブなフィードバックは伝えているが、ポジティブなフィードバックはあまり伝えていなかった
- 同僚の一人に私の父親に似た話し方をする人がいる。私の父親は、99成功しても1失敗したら「お前は役に立たない奴だ」と罵倒してくる人だったが、その同僚はそういう態度は示していなかった。
- 「自分のスキルは、書籍やサイトに書かれているものがほとんどなので、別に特別なものではない」と思い込んでいたが、自分と同様のスキルを持っている同僚や知人を探してみたら、ほとんどいなかった
3. (可能であれば)トリガーを解決する
上記1については、上司にポジティブなフィードバックも伝えて欲しいと伝えたことで、解決することができました。
一方で上記2については、父親の振る舞いに強いトラウマを抱えていると気付き、友人の勧めでメンタルクリニックを受診し、乗り越えようとしている最中です。
4. トリガーを「やり過ごせる」仕組みを作る
上記3については、「自分には他の人にはできない実績をあげたことがある」と視点を変え、実際に業績にあたるもの(例: Agile2014にacceptされた論文)をすぐに目に入るところに飾り、自分を過小評価しそうになったらそれらをみてトリガーを「やり過ごす」ことが徐々にできるようになってきました。
結論
怒りを他者にぶつけて困らせる振る舞いは極力減らしたいですが、怒ること自体までは否定しなくても良いのかなと。むしろ怒りを生じさせるトリガーも含めて自分自身であり、それらを受け止め、自分に優しさを示して克服していければ良いのかなと。